第99章 私が身を引けば、君が隙に付け込むのにちょうどいいだろうさ

「暇なの?」

長谷川栞は苛立ちを滲ませて言った。

「いやいや。中野社長が最近また大きい案件を二つ、俺に任せてくれてさ。もう手が回らないくらい忙しいよ。たまに本気で、栞さんが羨ましくなる」

中尾美希のわざとらしい声が受話器越しに届き、栞は胃の奥がむかついた。

反射的に胸元へ手を当て、息を整える。危うくその場で吐くところだった。

「用があるなら要件だけ。ないなら切る」

そう言って、栞は通話を終わらせるつもりで指を動かす。

「待ってよ、栞さん。少しおしゃべりしよう? 私、入社したばかりの頃、コピーもまともにできなかったの覚えてる? あの時、手取り足取り教えてくれたの、栞さんだったじゃ...

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